ヘドロまみれの学生服

もう何十年も前の出来事ですが、いまだにクリーニング店にとても感謝していることがあります。
忘れられない思い出として鮮明に覚えております。

 

それは、私が高校3年生の頃でした。
当時自転車通学をしていました私は、田んぼの中の細い道を自転車で通学していました。
両側は側溝になっていて、(いわゆるドブです)柵もなにもありませんでした。
通い慣れている道ではありましたが、やはりとても気をつけていつもその道を自転車で走っておりました。

 

その日は学校の帰りでした。
前から軽トラックがスピードを出してきました。
車一台と自転車がギリギリすれ違える道幅でしたが、私はそのスピードにびっくりして、
バランスをくずしてしまい、自転車ごとすっぽりと側道にダイブしてしまったのです。
一瞬何が起こったのかわかりませんでした。
振り返ってその軽トラをみましたが、停まって助けにきてくれる気配もなくそのまま行ってしまいました。

 

長い髪の毛にまでヘドロがへばりつき、顔も泥まみれ、制服のひだスカートは泥水をたっぷり含み重すぎて
冷たいドブの中で、どうしていいかわからず呆然としていました。

 

ようやくとりあえずじぶんだけでも出ようと、なんとか側溝からはいだして、
自転車もなんとか上にあげました。
そしてこのままの真っ黒のヘドロまみれの姿で、まだあと4キロほどある人通りの多い道をこいで帰ることも大変恥ずかしく、
途方にくれているところに、人が通りかかり声をかけてくださいました。
近くの方で、このヘドロまみれの私を家にいれてくれてシャワーをかして下さったのです。
ゾンビのような姿になった私に、よく声をかけてくださったと本当にいまでも思い返すと感謝で涙が出てきます。

 

そして、服ももう返さなくてよいからと、いらない服をくださって、
制服をビニール袋にいれてくださいました。
自転車の泥もホースで落としてくださいました。

 

そして、その足で急いで制服をクリーニングにもって行きました。
明日学校があるからです。
制服は1枚しか持っていないので、急いで持っていかないと、、と思い家で泥を洗い流すという考えも飛んでしまって
どろどろのまま持っていき、事情を説明しました。
すると、明日の朝までに綺麗にしてくれるとおっしゃってくださいました。
夕方にもっていったのに、事情をくんでくださり対応してくださりました。
そして、どろどろの制服にも嫌な顔ひとつせず、
私の傷だらけの顔や手を気遣ってくださいました。
そんなに親しくしてお世話になっている訳でもないクリーニング店でしたが、
本当に感激して、人の温かさに心うたれました。
次の日の朝は、登校前の早朝に店を特別に開けてくださり
いつも通りに制服を着て登校できました。

 

ドブにはまったことで、こんな素敵なお二人に出会えて
不幸中の幸いとはまさに、このことと思いました。